菅原直敏(神奈川県議会議員)議会報告ブログ〜千里の道も一歩から〜

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神奈川県議会議員菅原直敏の議会報告のブログです。神奈川県大和市選出。無所属。

第1章制度の沿革 2.退職金から年金に(現行制度の確立)

2.退職金から年金に(現行制度の確立)

地方公務員等共済組合法への統合

 昭和37年8月に、地方公務員等共済組合法が成立し、地方議会議員互助年金法も廃止され、同法に組み込まれることになった。これは、地方議会議員互助年金法附則第4項(4)による措置である。

 地方公務員年金制度と地方議会議員年金制度は、その沿革も内容もまったく異なるため、本来であれば同一の法律内に規定されることには馴染まない(5)。しかし、同一の法律にまとめられたことによって、議員年金制度は地方公務員制度の影響も結果的に受けるようになっていく。

 この統合による主な変更点は、①任意加入から強制加入になったこと、②公費負担の規定が設けられたことである。特に後者の変更点は重要である。公費負担の増減は総務省令で定めることとされているため(法167条2項)、国会議決が不要で国民の監視が働かない省令によって、国民合意なく国民負担を増やすことが可能となった。また、これらの変更は国会議員の年金制度に準じているという点が重要である(6)。給付水準は旧法のまま維持された。

 なお、昭和37年8月30日参議院地方行政委員会において、政府は法改正の説明にあたり制度の不備を認めながらも、簡易な年金数理による試算を行っていないことを明らかにした(7)。このことに対して、山本伊三郎委員はずさんな制度設計を厳しく質し、現状のまま制度を認めることは「(同制度が)将来問題になったときに、国会の威信にかかわる」と言明している。

公費負担規定の是非~国民負担の源泉

 法167条において地方公共団体の負担金が明示されたことは、大きな問題を抱えていた。互助年金制度とは、その性質上、会員の掛金で賄える以上の給付はできない。それ故に、会員間の努力によって会員の掛金によって賄えるように互助会運営を行っていくことが求められる。しかし、上限設定を欠き、国民合意を経る必要のない公費負担制度の導入は、会員がこの最も大切な運営努力を行う動機を薄弱にした。仮に公費負担率の決定が法定事項であれば、その都度国会審議及び議決が必要であるため、簡単に公費負担額を引き上げることはできず、共済会の自助努力も自ずと促されただろう。

 元来、議員年金制度の特徴である「低額負担高額給付」を互助年金制度で実現するためには、①相当な利率で積立金運用実績を挙げることか②会員数及び会員報酬が上がり続けることが前提条件となる。しかし、実際上このような前提状況を持続させることは困難であり、早晩制度が破綻することが予測されたのは前述したとおりである。そして、以上の前提条件を欠いても「定額負担高額給付」の制度を維持しようとするならば、外部資金である公的資金を投入するしか道はない。

このようにして、破綻を避けようとすれば会員間の運営努力により「相当負担相当給付」に収束していくはずであった地方議会議員年金制度は、公費負担制度の導入により税金によって「低額負担高額給付」を賄う互助年金制度へと変容した。

強制加入の是非と退職一時金の導入

 法166条等によって地方議会議員年金制度が強制加入の制度となったことも、議員の老後保障に関して大きな課題があった。

 地方議会議員年金制度は、在職期間12年以上の者のみに老後保障を認める掛け捨て年金制度である。逆の見方をすれば、在職期間12年未満の者の老後保障は一切念頭に置いていない。仮に、任意加入であれば、その掛金にあたる部分を民間年金(近年では国民年基金基金)や個人運用で老後保障にあてることができるにも関わらず、強制加入によりその機会を奪ってしまっている。

 また、任意加入であれば、法定の民間互助年金制度という建前を貫くことができたが、強制加入方式の導入によって、地方議会議員互助年金制度は社会保障制度の性質も帯びることになり、地方議員が年金制度について政府の責任を求める根拠の一つとなっている。

 しかし、その後6割近い者が年金受給要件を満たすことなく、年金を受給できていない現状が明らかになった(8)。各地方議会議員議長会の強い要請もあり、これらの者を救済することが重要であるとの観点から、昭和40年の法改正により、退職一時金制度(及び遺族一時金)が導入されることになった。その給付額は、在職期間に応じて7~9割程度となっている。また、その財源措置として、掛金率が5/100から7/100に引き上げられた。

但し、退職一時金の導入によっても、地方議会議員年金制度が基本的に掛捨て年金であることには変わりなく、在職期間が12年未満の者の老後保障という問題が改善されたわけではないことは注意を要する。

(5)「この法律に基づく地方議会議員の互助年金制度は、新たに地方公務員の統一的な退職年金制度に関する法律が制定される際、これに統合されるものとする」

昭和37年4月3日参議院地方行政委員会において、矢嶋三義委員が「こういう形態の法律(地方公務員の年金制度と地方議員の年金制度が同一の法律内に規定されている法律)というものは、世界のいずれの国にもない」と指摘。

(6)昭和37年4月3日参議院地方行政委員会における政府委員(佐久間彊)答弁、「現行制度におきましては、任意加入になっておりまするし、掛金で負担をいたしました場合に、それをまかなえない場合の公費負担ということも明確になっておりませんでしたので、その二点につきましては、国会議員の年金制度に準じて、この統合いたします機会に改めたわけでございます。」

(7)山本伊三郎委員の質問「どれだけの金が要ってどれだけが地方公共団体の負担になるか、そういう試算書すら何ら出さないで、これは無条件で承認せい、こういうのですか。」に対して、松浦功説明員は「議員の退職状況その他というものも必ずしも明白になっておりませんので、正確な保険数理的な資料というものは用意しかねますので、御了承いただきたいと思います。」と答弁する等、政府が正確な制度の将来試算を持っていないことが明らかになった。

(8)衆議院予算委員会第3分科会(昭和40年2月22日)佐久間政府委員答弁。