菅原直敏(神奈川県議会議員)議会報告ブログ〜千里の道も一歩から〜

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神奈川県議会議員菅原直敏の議会報告のブログです。神奈川県大和市選出。無所属。

第4章 制度の現状 1.厳しい現状と相次ぐ批判

1.厳しい現状と相次ぐ批判 目前に迫る積立金の枯渇  平成22年現在、年金財政の将来見通しは非常に厳しいものとなっている。掛金率・公費負担率の引き上げ及び給付水準の引き下げを行った、平成14年と平成18年の2回にわたる法改正にも関わらず、市及び町村議会議員共済会の積立金は平成22年度に、都道県議会議員共済会の積立金は平成33年度に枯渇する見込みである(図表1)。  このような厳しい見通しを受け、平成20年12月17日に、市議会議員共済会(全国市議会議長会)及び町村議会議員共済会(全国町村議会議長会)の会長は連名で、市町村議会議員が国策として進められた市町村合併に身をもって協力したことを理由に、「市議会議員共済会及び町村議会議員共済会の運営状況等を勘案し、その健全な運営を図るため必要な措置」(市町村合併特例法16条3項)を講ずるよう当時の首相に求めている。つまり、両共済会の積立金が悪化したのは国の責任であり、従って税金を投入して議員年金の安定化を図るべきであるという主張である。  但し、仮に合併がなかったとしても、平成30年には市及び町村議会議員共済会の積立金は枯渇する見込みであり(34)、早晩破綻する予定であった積立金の救済を全額税金で行うことは、その根拠に欠き、困難であると考えられる。また、この見込みに対して、「合併しなくても赤字が出るということは共済制度そのものが成り立っていない」のではないかという批判がなされている(35)。 図表1 都道県議会議員共済会及び市・町村議会議員共済会の財政見通し 20100328image1.gif 出典:地方議会議員年金制度検討会『資料3 財政見通しについて』「財政見通し 都道府県」平成21年5月29日、『資料3 基準試算の更新について』「基準試算(更新後) 市+町村」平成21年10月6日に基づいて筆者が作成 (34)第3回地方議会議員年金制度検討会『合併がなかったと仮定した場合の財政見通し』平成21年10月6日 (35)第3回地方議会議員年金制度検討会における藤田委員の発言,平成21年10月6日 強まる批判  国会議員年金及び地方議会議員年金は古くから特権的制度との国民の認識があり、常に批判に晒されてきた。平成18年4月1日に国会議員年金は廃止された(実際には完全な廃止ではないことは前述したとおり)ことや、2回にわたる法改正で地方議会議員年金への公費負担率が引き上げられたこともあり、地方議会議員年金制度に対する批判は年々強まっている。  批判の中身は多岐にわたるが、主に被用者年金と比較して優遇されているという趣旨のものが多い。しかし、批判の中には明らかな誤解に基づくものや意図的に微細な事例を誇張したものもあり、適正を欠いているものも少なくない(これらの批判に対する検討は前述した通りである)。但し、これらを差し引いても国民の感情的な批判は依然として存在する。 1人が複数人を支える現状  年金制度の状況を図る指標として成熟度がある。成熟度とは、年金の成熟度合いを示す指標で、一般的に被保険者数に対する年金受給権者数の割合で表わされる。平成19年度における各共済会の成熟度(遺族年金受給者を含む)は、都道府県議会共済会が131.6%、市議会議員共済会が286.1%、町村議会議員共済会が226.7%である(図表2)。特に市議会議員共済会においては、現職議員1人で約3人の年金受給者を支えていることになる。 また、地方公務員共済組合連合会の調査によると同年度における公的年金の成熟度は、厚生年金が36.4%、国家公務員共済年金が61.3%、地方公務員共済年金が55.9%、国民年金が37.5%となっている。公的年金と比較して、議員年金の成熟度の高さが窺える。制度が既に破綻していると言われる所以である。 さらに、このような状況は、後述する掛金率の上昇もあり、年金受給者と現職議員の間に大きな不公平感を生んでいる上に、地方議会議員年金制度を廃止する1つの論拠ともなっている。 図表2 会員数、年金受給者数及び成熟度の推移 20100328image2.gif (注1)「年金受給者」には、「退職年金」「遺族年金」を含む。 (注2)「退職年金」には若年停止者及び在職停止者を含む。 出典:地方議会議員年金制度に関する研究会『地方議会議員年金制度に関する研究会報告書(平成21年2月)』を基に筆者が作成 掛金率と負担金率の上昇と給付水準の低下  地方議会議員年金の収入は、現職議員からの掛金・特別掛金及び自治体の負担金よりなる。図表3が示すように、制度導入当初の昭和37年は、掛金のみで掛金率は5/100であった。昭和47年4月より自治体による負担金が導入され、負担金率は1/100、掛金率は9/100となった。平成7年4月には、期末手当を対象とした特別掛金が導入され、特別掛金率5/1000、掛金率11/100、負担金率9.5/100となった。その後、平成15年4月の変更で、比較的収支予測の厳しい市議会議員及び町村議会議員共済会と都道県議会議員共済会の掛金率等に相違が生じ、平成20年4月からは、市及び町村議会議員共済会においては、掛金率が16/100(都道県議会議員共済会は13/100)、特別掛金率が7.5/100(同2/100)、負担金率が16.5/100(同10/100)となっている。特に市町村議会議員の掛金率の上昇は著しく、生活を報酬に依る専業議員の多くは相当な負担感を持っていると考えられる。  現職議員と自治体の負担が増加する一方で、給付水準は平成15年4月に2割、平成19年4月に12.5%と引き下げられることとなった。特に平成15年の法改正については、制度改正前の議員歴を有する者は1割の引き下げとされたことから、既に年金受給資格を得ておりかつ引退を決めていた議員の一部において、平成15年4月の統一地方選挙直前の3月に「駆け込み辞職」をする現象がみられ、批判が集まった。なお、この間退職一時金の支給額も同様に引き下げられている。 図表3 掛金及び負担金率の推移 20100328image3.gif (注)負担金率には市町村合併の影響を激変緩和するための措置分が含まれる。措置分については、平成19年度は市が3.5/100、町村が4.5/100、20年度以降は市・町村ともに4.5/100。10年間の時限措置で、その後5年間で漸減。 出典:地方議会議員年金制度に関する研究会『地方議会議員年金制度に関する研究会報告書(平成21年2月)』に基づいて筆者が作成 低下する運用利回り  地方議会議員年金も公的年金と同様に積立金の運用収入を得ているが、その平均運用利回りは著しく低下している(図表4)。最盛期である昭和55年の平均運用利回りは、都道県議会議員共済会が8.10%、市議会議員共済会が8.72%、町村議会議員共済会が7.91%であったのに対し、平成19年度にはそれぞれ2.98%、1.58%、0.39%に低下している(36)。特に市及び町村議会議員共済会における利回りが低いのは、積立金の枯渇が目前に迫り、積立金の長期的な運用が困難なことが一因である。原資である積立金の減少により、運用収入による収支の健全化はほとんど期待できない。なお、積立金は国債等によって安全な運用をされている(37)。 図表4 平均運用利回り 20100328image4.gif 出典:地方議会議員年金制度に関する研究会『地方議会議員年金制度に関する研究会報告書(平成21年2月)』を基に筆者が作成 (36)地方議会議員年金制度に関する研究会『地方議会議員年金制度に関する研究会報告書』平成21年2月,p39 (37)「共済会の業務上の余裕金は、総務省例で定めるところにより、安全かつ効率的な方法により運用しなければならない」(法157条)