菅原直敏(神奈川県議会議員)議会報告ブログ〜千里の道も一歩から〜

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神奈川県議会議員菅原直敏の議会報告のブログです。神奈川県大和市選出。無所属。

第5章 制度の廃止 2.年金財政が悪化した本当の理由

2.年金財政が悪化した本当の理由

既に破綻した制度

 第一の制度廃止理由は、地方議会議員年金制度は既に破綻をしているということである。以下、制度発足時から現在に至るまでの過程を改めて振り返る。

 昭和36年、現行制度の前身である地方議会議員互助年金法が成立した際、地方議会議員年金は、会員の拠出金によってのみ運営される互助年金制度として発足した。発足の際確認されたことは、①掛金によって賄われる互助年金であること、②地方への過大な負担は避けることである。この点は、現在に至るまで変わっていない同制度の基本である。

 次に、昭和37年の地方公務員等共済組合法に合流された際に、公費負担が制度として導入されたが、③公費負担の投入は共済会が自助努力(掛金の引き上げ及び給付の引き下げ)を行った後の例外的措置であることも確認されている。また、前述のように公費負担については地方財政に過大に負担をかけないという留保があることも忘れてはならない。

 しかし、初めて共済会の破綻が予見された昭和46年の法改正の際、後述するように共済会は十分な自助努力を行うことなく、多くの公費負担を地方自治体より受け入れてきた。このことは、①と③の条件に反する事実である。さらに、30年以上に渡り6000億円以上の公費を投入してきたにもかかわらず、共済会の収支は悪化の一途を辿り、更なる公費負担率の引き上げを行った結果、地方財政には多大なる負担が寄せられ、無視できない程度にまでなっている。これは、②の条件に大きく反している。

 以上を勘案すると、地方議会議員年金制度の現状は、制度発足当初に予定された適正な状態とは大きく乖離しており、実質的には破綻をしている制度と言っても過言ではない。従って、以後会員の自助努力のみによって制度を継続するというのであれば別であるが、実質的に破綻した制度に公費負担を投入して存続させることは、更なる国民負担の増大を招き適当ではないと考えられる。

誰も触れない共済会の責任

 「地方議会議員は、何か悪いことをして、年金財政を破綻させたわけではない」、平成21年12月4日の第5回地方議会議員年金制度検討会における全国市議会議長会会長の発言である。確かに、個々の議員が悪いことをしたわけではないし、近年の度重なる給付水準の引き下げや掛金率の引き上げにおいて身を削っているという思いが強いことも理解できる。少し前に引退した既裁定者の相当優遇された給付水準を見れば尚更だろう。

また、平成に入ってから進められた市町村合併の結果、年金財政が更に悪化したこともあり、地方議員の中には国に対する被害意識を持っている者も少なくない。しかし、国に責任を転嫁するばかりでは、本当の財政悪化の理由は見えてこない。

実は、年金財政悪化の最大の要因は、共済会及びその構成員である議員にある。早期の自助努力を行わず、安易な税金投入に頼ってしまったことが根本的な財政悪化の原因である。

もっと早くできた自助努力

 「いろんな部分をやっぱりやった上で最後にやっぱり公費負担を引き上げるということが必要になってくる」と、平成14年4月25日の参議院総務委員会において高橋委員は自助努力の必要性を指摘している。遡って、初めて共済会の破綻の危機が訪れた30年前の昭和46年5月12日の衆議院地方行政委員会においても、山本政府委員が「やはり経営努力といいますか、共済会自身の努力が必要であろうかと思います。掛け金を上げるなりあるいは給付の歯止めをするなりして自己努力をする必要があろう」と自助努力の必要性を強く説いている。さらに、平成18年5月16日衆議院総務委員会において、富田議員は「もう制度ができてから、昭和四十年代にかなりこの地方議員年金というのは制度としては成熟化してきて、財政的に厳しくなるんだというのは恐らくわかっていたんだと思うんですね。それなのに、結局十四年まで何もできなかった」と昭和40年代から30年間以上、今日の状況が予見できたにもかかわらず共済会としての自助努力がほとんどなされなかったことを指摘している。この他にも今日に至るまで自助努力を求める多くの必要性が指摘されているし、何よりも昭和46年法改正時には「地方議会議員の年金制度については、その健全化をはかるための措置を検討すること」という付帯決議がなされている。

 本来であれば、昭和46年の法改正に合わせて、現在行われているような厳しい自助努力を行うべきであったのではないだろうか。昭和47年から平成に至るまで、公費負担率は「掛金総額の1/9」から「標準報酬月額の9.5/100」にまで大幅に引き上げられたにも関わらず(額にして4.4億円から179億円)、共済会によって行われた自助努力は掛金率をゆるやかに4%程度引き上げただけである。これでは、公費負担の上限が定まっていないことを奇貨として、自助努力を怠ってきたと言わざるを得ないのではないか。

自助努力で得られた財源の試算

それでは、当時どの程度の自助努力が求められたのであろうか。独自の試算を行った。まず掛金率であるが、保険数理を用いて厳密に計算すれば大変厳しい数字が出てくるわけだが、「12/100」という掛金率を用いる。この掛金率は、昭和37年参議院地方行政委員会において、平準保険方式を採用した場合に地方議会議員年金制度を維持するために求められる掛金率に対する松浦功説明員の見解である。給付水準は1割削減する。また、昭和47年から平成19年までを試算期間とする。

 以上の条件で試算をすると、各共済会の合計で約2062億円(都道府県議会195億円、市958億円、町村909億円)の財源が捻出されることが判明した。また、給付水準を2割削減した場合は3548億円の財源が捻出された。さらに、仮に平成18年法改正において市町村議会議員共済会に課された「掛金率16/100」、「給付水準35/150」を昭和47年時に導入した場合の試算をすると、7492億円の財源効果が見込まれた。

 これらの全ての試算は、共済会の過去の実績額に掛金率等を掛け合わせた荒いもので、多少の誤差はある。しかし、現在の財源不足が見込まれている約3500億円程度は、昭和47年の段階で共済会が適切な自助努力に踏み切っていれば、十分対応できていたと考えられる。これらの試算は、平成の大合併の影響分として算出された1883億円をはるかに上回る額である。

 以上は、昭和47年当時においても十分考えられ得る現実的な試算である。地方議会議員年金制度が今日のように悪化した最大の要因は、共済会が制度の求める徹底的な自助努力を長年にわたり怠ったことである。国に対して市町村合併による激変緩和措置(税金投入)を求める気持ちも理解できないわけでもないが、まずは自分たちの自助努力の欠如によって公費負担が増えたという認識を当事者が持つことが必要である。