菅原直敏(神奈川県議会議員)議会報告ブログ〜千里の道も一歩から〜

菅原直敏(神奈川県議会議員)議会報告ブログ〜千里の道も一歩から〜

神奈川県議会議員菅原直敏の議会報告のブログです。神奈川県大和市選出。無所属。

神奈川県議会のICTが何故失敗したか

 

 

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神奈川県議会は昨年より、議員全員に配布されたPCを一斉にタブレットPCに入れ替えました。これが多くの議員に不評で、端末の使いにくさも手伝って、大きな課題となっています。

 

実際、議場で電波が繋がらず紙の資料を持ち込まなければならなかった(現在多少改善)、タブレットPCになったため今までのような業務ができなくなったといった問題が顕在化しました。

 

これを改善するために、新しくPCを買う議員が現れたり、自分流のシステムを構築し直す議員がいる一方で、タブレット自体に触らない議員もいます。一部の議員かもしれないですが、以前よりも業務効率が落ちていることからも失敗というのが私の捉え方です。

 

このような問題が発生した理由は主に以下の3つであると私は考えます。

 

①デザイナーの不在

②ユーザーの不在

③費用対効果意識の不在

 

この問題は、神奈川県議会だけではなく、全国各地の議会や行政にも通ずる課題ですので共有も含めてご報告します。

 

 

 

 

1.デザイナーの不在

 

おそらく9割以上の問題はデザイナーの不在によるものです。

 

この手のICT導入の検討をするとき、多くの人たちは導入する「モノ」に目が奪われがちです。例えば、今回の県議会の件ではPCをタブレットPCにするというモノの視点に目が奪われていました。

 

しかし、重要なことはどのような「モノ」を導入するかではなく、どのような「コト」を目指すかという視点です。今回の県議会でタブレットPCが検討された経緯は会議資料のペーパレス化や議場にPCを持ち込むことによる議会のICT化など様々なニーズからです。もちろん、最も頻繁にやりとりがされる行政・議会間との業務効率化も必須事項だったはずです。

 

しかし、実際には前述したように議員によっては業務量が増えました。また、ノートPCがタブレットPCになったところで、当然行政・議会間のやりとりに変化が起こるわけでもありません。

 

ICTに明るくない職員が中心となって、ノートPCをタブレットPCにすることに重きが置かれてしまったために、全体のシステムをどう設計するのかという「コト」の視点が欠落してしまったのでしょう。

 

職員側も議員側もICTに明るいデザイナーを中心に検討を進めていくべきでした(もちろん、議会の様々な諸手続きや慣習のためにそれが難しいという点はあったのですが)。

 

 

2.ユーザー不在

 

次の問題はニーズの不在です。

実はタブレットPC導入の過程で、議員への本質的なニーズ調査は行われませんでした。導入検討段階から、個人レベルでは私も様々なニーズを職員にお伝えをしてはいましたが、どこまで検討されたかは定かではありません。

 

気づいたら、現行のタブレットPCの導入があれよあれよと決まっていきました。

 

ICTの能力については、議員によって大きな開きがあります。したがって、以前ノートPCにおいても、その用途は大きな開きがあったはずです。それにもかかわらず、一律同じタブレットを導入するということは、現場のニーズを無視した一種の暴挙です。

システムについても同じです。こちらについては、ほとんど意向調査も行われることなく、業者の言われるがままに、汎用性の低いクラウド書類保管システムが導入されました。

 

こういうと、行政の入札の特性上、各議員で変化をつけることは難しいといったお答えが返ってきそうですが、その点については次で詳述します。

 

 

3.費用対効果不在

 

最後の問題は費用対効果不在です。

 

多くの自治体ではこの手のシステムを導入するときに、身内にデザイナーがいないために、業者の言われるがままになっていまい、非常に高額で保守管理も特定の業者しか関われないようなシステムを導入してしまい、結果的に税金は無駄にすることが少なくありません。

 

そもそも、今回の件で大切だったことは、ICT化による業務の効率化であり、タブレットPCの導入であったわけではありません。

 

議場にPCを持ち込むという論点に対しても、既にタブレットPCを持っている議員は、選択的に自分のものを持ち込めるようにすればよかったのです。また、クラウドシステムも汎用性のあるものにしておけば、私用のタブレットでもアクセスできます。

 

これだけでも、人によっては使い勝手の悪い、使われないタブレットPCの導入コストが相当削減できました。新たに必要な人だけに配布すればよかったのです。

 

その軽減された費用を、むしろ行政と議会との多大なやりとりを軽減するシステムの構築のために用いたならば、まさに職員・議員双方にとっての働き方改革になったでしょう (業務連絡や説明のために廊下で議員待ちする職員の多さこそ大きなコスト)。

 

一事が万事ではありませんが、これは多くの場合に当てはまります。

 

 

今回の神奈川県議会のICT化は明らかな失敗です。最近、現行のタブレットPCの更新にかかる案件が降りてきて、会派の会議でも話題になりましたので、私は以上の本質的な意見を申し上げております(残念ながら今期は無難な更新に終わってしまいそうな雰囲気でしたが)。

 

4.3月2日文教常任委員会での議論

 

また、先日の文教常任委員会でも、校務のICT化とICTによる教育環境の整備について、上記と同様な文脈で指摘と提案を行いました。

 

神奈川県では、校務のICT化(「働き方改革」)とICTによる教育環境の整備(主に生徒の教育にかかること)が、別個に議論されていることが明らかになりました。私の質疑に対して、各担当課長が異なった答弁をしたためです。

 

当然このような傾向で双方の目的が達成されるわけもなく、教育長が自主的に「最終的に両者は一致する」旨の答弁がなされました。もちろん最終的に一致することは当然なのですが、何度も申し上げている通り、大切なことはシステムの設計当初から一体的に考えることです。異なった環境で設計されたICT環境を統合することは、新たな環境を作るよりも難儀です。

 

例えば、校務には先生と生徒の日々の課題などのやりとりも含まれます。両者を一体的に考えれば、こういった校務についても効率化の道が拓けますし、そのためにどのような機器を導入すべきなのかが自ずと見えてきます。

 

残念ながら、常任委員会の席に座る管理職の中にはこれらのICTに非常に明るい人はいないことも質疑から明らかになりました。

 

県民から預かった税金を有効活用し、子供たちに適切な教育環境を提供し、教員が働きやすい職場を作るという全てのステークホルダーがwin-winになるためにも、今回の委員会では、管理職として責任ある立場にICTに明るい人間を年齢など関係なく登用することを提案しました。つまり、デザイナーの必要性を指摘しました。

 

 

 



当然、ICT化が上手くいく議会や行政もあり、そういった自治体はデザイナーの役になれる人が必ずといって良いほどいると思います。

 

千里の道も一歩から

 

神奈川県議会議員

 

菅原直敏

 

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